被相続人の死後に使い込みが発覚した場合

被相続人の預貯金・遺産を使い込んだ相続人に対して、使い込まれたお金を返還請求(不当利得返還、横領・不法行為に基づく返還請求)したい方

1 被相続人の預貯金、遺産を使い込んだ相続人に対して、使い込まれたお金を返還請求するための準備

(1)遺産を使い込んだ人の特定

遺産を横領・使い込んだと思う相続人と、預貯金の不正な引き出しをした人物が同一人物であることを確認します。
確認すべき事項は、被相続人の通帳、キャッシュカード、銀行印の管理状況です。また、預貯金の不正な引出しが行われている店舗・ATMの場所と預貯金や遺産を横領・使い込んだと思う相続人の住所や職場とが距離的に矛盾しないかを検討します。預貯金や遺産を横領・使い込んだと思う相続人の転勤や長期出張がなかったかの情報もあれば、更に確実になるでしょう。

(2)遺産の横領使い込み金額の確定

被相続人の預金通帳の引き出し金額を日付ごとにピックアップし、預貯金、遺産の横領・使い込みと思われるものとそうでないもの(正当な支出・経費)とを分けます。
預貯金、遺産の横領・使い込みと思われるものだけを抜粋して表でまとめておくことが重要です。また、他の銀行の預金通帳を見比べて、単に口座間の資金移動ではないかも確認しましょう。(※口座間の資金移動:父のA銀行から50万円を引き出したが、父のB銀行に50万円が同じ日に入っている場合などは、単純な資金移動とされて、預貯金、遺産の横領・使い込みから除外されることがあります)

2 被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込んだ人への返還請求(内容証明郵便)

被相続人への預貯金・遺産を横領/使い込んだ人への不当利得返還請求、横領・不法行為に基づく損害賠償請求を行います。返還・賠償請求の仕方は、返還・賠償請求額全額を記載して、内容証明郵便を出すことになります。支払い期限を設けておくとよいでしょう。
被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込んだ人が、支払い期限までに支払わない、支払いわないという内容の回答書を送ってきた、という場合には、次のステップへと移ります。

3 裁判・調停手続による被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込んだ人への返還請求

(1) 裁判による解決を図る

(被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込んだ人に対して、不当利得返還請求訴訟または不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を起こす)
被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込んだ人が、「預貯金を引き出していない」「預貯金を引き出したが、返還義務がない」など返還に応じない場合には、被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込んだ遺産の返還を求め、裁判を起こすことができます。具体的には、不当利得返還請求訴訟または不法行為に基づく損害賠償請求訴訟を起こすことができます。裁判の種類としてはどちらでも起こすことができます。ただ、それぞれの裁判では時効や弁護士費用の負担などで違いがありますので、慎重に検討して選択することになります。

被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込んだとされる相続人は、裁判に出席して争う姿勢を示さないと、原告側の請求を認めたとみなされて、全面敗訴してしまいます。そのため、前述の「被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込んだ人への返還請求(内容証明郵便)」で回答せず無視してきた相続人であっても、被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込みの裁判となれば、裁判に応じざるを得ません。つまり、この手段は預貯金、遺産の横領・使い込んだとされる相続人から遺産の使い込みの返還請求を無視されている場合でも、強制的に被相続人の預貯金、遺産の横領・使い込み問題に対応させることができる点にメリットがあります。

(2)遺産分割調停の中で解決を図る

遺産を使い込んだ人が相続人の場合で、遺産分割調停を行っている時や、他にも分けるべき遺産があって遺産分割調停を今後起こす場合には、遺産分割調停の中で、被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込みについても返還を求められる場合があります。ただし、相続人全員の同意がない場合には、前述の「(1) 裁判による解決を図る」方法で被相続人への預貯金・遺産を横領/使い込んだ人に対して、【不当利得返還請求訴訟】または【不法行為に基づく損害賠償請求訴訟】で解決することになります。

(3)遺留分減殺請求調停で解決を図る

遺言や生前贈与、被相続人の預貯金・遺産の横領/使い込みで遺留分を侵害されていて、話し合いがまとまらない場合、遺留分減殺請求調停で解決を図ることができます。この中で、被相続人の預貯金、遺産の横領・使い込みは、「被相続人からもらった(贈与)」ということになれば、遺留分減殺請求調停の中で特別受益の持ち戻し(贈与を受けた分も遺産に戻して、遺留分の金額に反映させます)となります。被相続人の許可なく、勝手に預貯金や遺産を使い込んだ場合には、被相続人は預貯金を使い込んだ相続人・受遺者・受贈者に対して、金銭の支払い請求債権(【不当利得返還請求権】、【横領・不法行為に基づく損害賠償請求権】)を持ちますので、この債権が遺産となり、遺留分減殺請求調停の中でも、遺留分の金額に反映され増額されることになります。ただし、遺留分減殺調停手続の当事者(相続人、受遺者、受贈者)が遺留分減殺の問題全体についての解決に合意できなければ、調停は不成立となります。その場合、遺留分減殺請求裁判を起こして、一から手続きをやり直すことになります。この辺りは、遺産分割調停と似ています。

(4)遺留分減殺請求訴訟で解決を図る

遺言や生前贈与、遺産の横領/使い込みで遺留分を侵害されていて、遺留分減殺請求調停で解決できなかった場合には、遺留分を侵害している人に対して、遺留分減殺請求訴訟を起こし、遺留分の支払いを求めることができます。この中で、上記「(3)遺留分減殺請求調停で解決を図る」と同じく、被相続人の預貯金、遺産の横領・使い込みは、被相続人からもらった(贈与)ものであろうと、被相続人の許可なく勝手に使い込んでいようと、いずれの場合でも、遺留分減殺請求訴訟の中で、遺留分の金額に反映され遺留分の金額が増額されることになります。

4 裁判・調停手続による被相続人への預貯金、遺産の横領・使い込んだ人への返還請求の進め方、解決方法

不当利得返還請求訴訟、横領・不法行為に基づく損害賠償請求訴訟

原告、被告双方の主張を行います。裁判は月1回程度のペースで進んでいきます。原告被告お互いの主張や証拠が出尽くしたところで、尋問手続きに入ることが一般的です。裁判の途中で裁判所主導で和解による解決が試みられることも多いです。原告としては、被告側の反論(引き出したのが被相続人本人である、被相続人の預金を引き出したが贈与や介護の報酬でもらった、被相続人に頼まれて全額渡した、被相続人の税金や介護費用に支払った、など)をつぶしていくことになります。原告被告とも裁判の主張や反論は、引き出し額全体についてするのではなく、1回ごとの引出しについて行う必要があります。また、裁判官によっては、心証(判決になった場合に原告被告どちらが有利か)を開示する場合もあります。裁判の進行状況に応じて、和解に応じるメリット・デメリットを検討する必要があります。和解がまとまらない場合には、判決になります。

遺産分割調停

遺産を使い込んだ人が相続人の場合で、遺産分割調停遺産分割調停では、原則的に被相続人の預貯金・遺産の横領、使い込みは遺産分割調停の対象にはなりません。そのため、相続人全員が遺産分割調停で解決するという同意がないと、遺産分割調停では解決が図れません。この場合、上記の不当利得返還請求訴訟、横領・不法行為に基づく損害賠償請求訴訟で解決を図ることになります。

遺留分減殺請求調停

すでに述べた通り、遺留分減殺調停は、調停に参加する全当事者(相続人、受贈者、受遺者など)が全体的な解決に同意しないと解決できません。そのため、調停で、被相続人の預貯金、遺産の横領・使い込みの争点を持ち込んでじっくり行うか、そもそも遺留分減殺調停がまとまる可能性が低いと見込んで、遺留分減殺請求訴訟に早い段階で目標を切り替えるか、判断するのが得策になります。遺留分減殺調停は家庭裁判所、遺留分減殺裁判は地方裁判所と裁判所が異なり、裁判官が交代することが一般的なため、調停から裁判への引継ぎがないためです。

遺留分減殺請求訴訟

遺留分減殺請求訴訟では、被相続人の預貯金、遺産の横領・使い込みについて、「被相続人からもらった(贈与、介護の報酬など)ものとして、特別受益として遺留分減殺請求訴訟の中で持ち戻して遺留分を増やすべきか」、「被相続人の許可なく勝手に使い込んだとして、被相続人は預貯金を使い込んだ相続人に対して、遺産として金銭の支払い請求債権(不当利得返還請求権、横領・不法行為に基づく損害賠償請求権)を持つとして遺留分を増やすべきか」の判断がなされます。
ただし、被相続人の預貯金・遺産の横領/使い込みを主張する側では、贈与か無断引き出しかを断定しづらいことが多いです。そのため、贈与か無断引き出しかの二本立てで行くことが安全といえます。

相談実績・解決実績

相続財産の使い込みについての相談東京ミネルヴァ法律事務所では、遺産の使い込み事案について、返還請求する場合にはどういった事例を扱っていますか。

弁護士の回答遺産を使い込まれたとして返還請求する側の裁判前の示談・和解交渉、裁判を多く取り扱っています。金額的にも、遺産の使い込み金額が億を超える案件も複数扱っており、様々事例を扱った経験があります。

その他、お問い合わせの多いご質問内容については「相続に関するQ&A【遺産の使い込み】」コンテンツでご紹介しておりますので、ご覧ください。

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