相続法改正:自筆証書遺言制度の一部見直しについて【2】

自筆証書遺言で財産目録が重要となる理由

前回のコラム(「相続法改正:自筆証書遺言制度の一部見直しについて【1】」)にて、遺言に書くべき内容として、遺産の分け方は勿論、それ以外に財産目録も重要との内容を解説しましたが、財産目録が重要な理由は何故でしょうか?

それは財産目録によって、遺言者の財産の特定できるからです。

遺言の中で財産目録として、遺産をリスト化してあれば、相続人たちも遺言者の全財産を分割することができます。

もしも財産目録がなかったとしたら・・・?

遺産のリストがないと、相続人が知らないために、長年利用していない遺言者の預貯金口座やゴルフ会員権などが気づかれないまま「そのまま放置状態」ということも結構あったと思います。

改正で、財産目録の作成が「手書きでなくても良くなる」ことのメリット

財産目録は、件数が多く、遺産1件ごとに書く内容も多い(不動産なら登記簿の情報である所在、地番、面積など、預貯金なら銀行名、支店、口座種類、口座番号、口座名義人など)ので、手書きするとなると結構手間が掛かることでしょう。

しかし、パソコンやワープロを使用しても良いとなれば、財産目録作成の負担もかなり楽になります。

さらに、それぞれの機関(不動産登記の相続登記であれば法務局、預貯金の解除なら銀行、株などの有価証券であれば信託銀行、や証券会社・・・等)で遺言に基づいて、相続手続きを行うことになりますが、遺言に財産目録がなく、「私の遺産は~」としか書いていない場合、本当にその機関で扱う財産がこの遺言通りの相続として処理してよいかが明瞭でない為に、手続きが進まない可能性もありえます。この点も、財産目録を遺言につけておけば回避できます。

次回は、自筆遺言の書式改正がどう遺言無効裁判に影響するかについてです。

相続法改正:自筆証書遺言制度の一部見直しについて【1】

相続法改正~自筆遺言での書式の改正~

相続法の改正で、自筆遺言の書式も改正されることになりました。

財産目録は自筆ではなく、パソコンやワープロで書いてもよく、遺言の全てのページに遺言者の署名と押印があれば有効とされることになります。この改正はかなり画期的と思います。

参考比較:従来の「自筆証書遺言制度」
自筆遺言は全文自筆と民法に規定がある為、遺言の本文だけでなく財産目録も全て手書きである必要がありました。

そもそも遺言においては、遺産の分け方ももちろんですが、財産目録(遺産の内容)も重要です。

遺言といえば、「私の全財産を〇〇(妻、長男などの近しい親族)に相続させる」といった、1行で終わる簡単なものもいまだに多いです。

財産の内容が書かれていない遺言も多いのですが、その理由としては「財産を全部手書きで書くのが大変」という事情もあったのだと思います。

次回は、「なぜ自筆遺言で財産目録が重要か」についてご説明致します。

相続の法改正見込み~配偶者優遇の制度について~その4

前回までのコラムでは、配偶者居住権がこれまでの相続・遺産分割実務に与える影響を解説してきました。

バックナンバー「配偶者居住権」:その1その2その3

では、配偶者居住権によって、配偶者が自宅不動産に住み続けることができるとして、他の相続人は何も権利を主張できないのでしょうか。

報道では、「配偶者居住権も遺産、金銭的に評価して、相続や遺産分割全体に反映する」ことになります。

つまり、配偶者は、配偶者居住権という権利を相続で得るため、たとえば配偶者居住権として500万円の価値を取得したこととして、それ以外の預金や株式などの遺産も他の相続人と分けあうという形になることが予測されます。このときに、配偶者居住権は、自宅の所有権の評価額よりも低額になります。そのため、法定相続分で遺産分割するとした場合に、配偶者は、預金や株式についても相応の遺産を取得できることになります。そのため、配偶者にとっては自宅以外の遺産の取り分も増えることが推測されます。

相続の法改正見込み~配偶者優遇の制度について~その3

バックナンバー「配偶者居住権」:その1その2

被相続人の遺産不動産を相続人で共有名義にした場合と
配偶者居住権の関係

遺産分割で、相続人全員で自宅不動産を共有名義にすることで合意して遺産分割協議を終えた場合を考えてみます。これで円満解決とはいきません。

たとえば、

  • 他の共有相続人が、自宅に居住する配偶者に高額な賃料を請求してきたら?
  • 共有相続人も自宅不動産の一部でも使いたいと要求してきたら
  • 共有相続人が自宅不動産を売却してお金が欲しいと言い出したら?

どれも不動産共有ではよく生じる問題です。

それだけでなく、もし共有相続人が、居住する配偶者に断らずに、共有持ち分を第三者に売却していたら?

(※共有持ち分は他の共有者に断ることなく、第三者に売却することが原則可能です)

第三者が共有者になった場合、賃料請求や共有持ち分の買取交渉などは、相続人同士の時よりももっとシビアになるでしょう。

だからこそ、今回の配偶者居住権の新設は、配偶者が、一定期間や終身、自宅不動産で生活することを保障する制度となると考えられますので、画期的なのです。

次回は他の相続人側からの視点を絡めてご説明します。

本人訴訟

本人訴訟に関する相続の相談相続で揉めています。弁護士に頼まずに自力で紛争解決できますか?それとも必ず弁護士を立てることを裁判所から求められますか?

弁護士に依頼せず、ご自身で裁判を闘うことも出来ます

裁判や調停などの法的紛争解決手段において、弁護士はあくまでも「代理人」。
訴訟代理人(弁護士)を立てないでご自身で訴訟を行うこともできます。
(∵日本の司法制度では、民事については弁護士を立てることを強制していない)

それが「本人訴訟」です。

裁判所は親切なので、窓口でパンフレットをくれたり、調停の申し立てや訴えの提起に必要な手続について丁寧に教えてくれたりします。
手続上のミスがあってもある程度フォローしてくれます。
これが、日本が世界の国々に比べてずば抜けて本人訴訟が多い理由だと思います。

実際、川島が担当した事件でも、本人訴訟(相手方に弁護士がついていない訴訟案件)がいくつもあります。

中には「(弁護士を頼まず)自分で裁判しようと思ったけど…」と行き詰って途中から相談に来る方もいらっしゃいます。

また、こちら側に弁護士がついたと分かり、急いで自分も弁護士を選任した相手方もいます。

弁護士をつけるかどうかはご本人様の自由ですが、

  • 「弁護士がいれば、もっと良い結果になったのに」
  • 「弁護士をつけなかったせいで不利になった」

と後悔することになってしまっては勿体ないなぁ、と思います。

(※【本人訴訟の2割について、事件を担当した裁判官が、「弁護士がいれば、より適切な主張や立証ができ有利になった可能性がある」と回答。最高裁判所司法研修所が調査し、「妥当な結論を得るには弁護士の選任を増やす必要がある」と結論付けている】と読売新聞一面記事が報じたことがあります。2013年5月頃のことです。)

「本人訴訟」しない弁護士も結構多い。
(自己弁護しないで、他の弁護士にプライベートな案件を頼む)

さて。意外なことかもしれませんが、
弁護士仲間から「代理人」を頼まれることもあります。
事件の当事者が弁護士で法律や紛争解決のプロなのにも関わらず、です。それは

  • 「川島は相続事件に強い弁護士だから(安心して任せられる)」とか
  • 「不動産問題に詳しいから(自分で調べるよりも早い)」とか

そういった理由というよりは、おそらく
「当事者だけで争うと感情的になりやすい」と知っているから。

後者の理由による部分が大きいと思います。

感情的になって冷静さを見失い、必要な主張や立証ができないのでは非常に残念です。

『舟は船頭に任せよ(船は船頭に任せよ)』

川島自身も『餅は餅屋』(=何事においても、その道のことはそれぞれの専門家にまかせるのが一番良い)と考えているので、必要に応じて税理士や弁理士、司法書士など他の専門家に入ってもらって事件解決に臨むことがあります。場合によっては、同業者(その分野に強い弁護士)にお願いすることもあります。

自分で動くより、専門知識も経験も豊富なスペシャリストに頼んだ方が手間と時間を節約出来て良いという理由もあります。(=その分自身の得意分野に注力できます)

自分よりも「他の弁護士の方が良い結果を勝ち取れそう」と判断したときも、素直にクライアント様に伝えています。

(その上で川島に依頼するか紹介した別の弁護士に頼むかはクライアント様次第ですが・・・)「それでも(川島に)引き受けて欲しい」という場合は、もちろん、全力で取り組んでいます。(経験が浅い分野だったりしても一生懸命お仕事させていただきます。「クライアントの皆様がどんなことでも相談できるような存在」たる弁護士を目指し、常日頃から、分野を問わずに見識を広める努力をしております)


※上記投稿内容は、2013年5月17日投稿分のブログ記事をリメイクしたものです。
オリジナル記事は次の「詳しくはこちら」ボタンからご覧になれます。
「本人訴訟|弁護士 川島浩」「詳しくはこちら」ボタン

尚、川島自身の得意分野は「相続」「不動産関係」ですが、その他の分野の法律トラブルのご相談も承ります。

個人様・法人様、どちらのご相談にも対応致します。
家事・民事・商事・刑事の各種案件を取り扱っております。
東京ミネルヴァ法律事務所では9名の弁護士が、それぞれの得意分野を活かし協力し合うことで、複雑に絡み合った問題の解決にも努めております。

弁護士法人東京ミネルヴァ法律事務所では、土日祝日を問わず、新規お問い合わせを承っております。(受付:03-5356-6362) 弁護士が電話に出れない場合はコールセンターに繋がりますが、「法律相談を希望」等ご用件をお伝えくだされば、のちほど弁護士から折り返しのお電話を差し上げます。

相続の法改正見込み~配偶者優遇の制度について~その2

今国会では、相続時の遺産分割で配偶者を優遇するための法律改正が議論される見込みです。高齢化社会を見据えて、死後残された配偶者の生活の安定化を図るための制度です。成立すれば、相続分野では1980年以来の大幅な見直しになります。

さて。今回は、相続法で新設される「配偶者居住権」がなぜ画期的かご説明したいと思います。

今回の改正前、すなわち現在の遺産分割では、遺言などで取り決めがない限り、遺産を相続人が法定相続分で分けることになります。これは自宅不動産も相続人全員で法定相続分で分けることつまり共有になることを意味します。もし他の相続人が、自宅不動産を売却したいとなった場合、最終的には配偶者は、他の相続人の共有持ち分を買い取れない限り、自宅を売却しなければならなかったのです。

子どもが被相続人の配偶者、つまり母親に自宅不動産から追い出すようなことをするのか、と疑問に思われるかもしれません。しかし、子どもが被相続人の離婚した配偶者の子で、死亡時の配偶者が再婚相手であったらどうでしょうか?また、子どもがいない夫婦では、被相続人の親や兄弟姉妹が相続人になりますが、被相続人の配偶者との関係が必ずしも良好な家庭ばかりではないのです。

実際、こういったケースで被相続人の配偶者が、自宅不動産を相続する代わりに、他の相続人には自宅不動産の持ち分相当額の金銭(代償金)を支払えずにやむを得ず売却したといったケースは多いのです。

この点だけ見ても、今回の配偶者居住権は画期的といえないでしょうか。

次回は、被相続人の遺産不動産を相続人で共有名義にした場合と配偶者居住権の関係を解説します。

相続の法改正見込み~配偶者優遇の制度について~その1

2月16日、法務大臣の諮問機関・法制審議会が、被相続人の相続・遺産分割で配偶者の優遇を図る民法改正の要綱を全会一致で採択したとの報道がなされました。法務省は今国会に配偶者優遇の民法改正案を提出する予定とのことです。相続法分野では、最高裁判決による大幅な判例変更はありましたが、民法などの相続関連法令単体の大幅な見直しは1980年以来とのことです。配偶者優遇の相続法改正の内容としては、死別した配偶者が、老後の住まいや生活費を確保しやすくすることを狙っているようです。

具体的な配偶者優遇の相続法改正の中身を見ていきましょう。

大きな内容として、配偶者の住居の保護です。配偶者が相続開始時に被相続人名義の建物に住んでいた場合、終身または一定期間居住できるように法改正するとのことです。今回の相続法改正では、配偶者が住居に住む権利を「配偶者居住権」として法律上新しく権利を設定するようです。自宅の権利を所有権と居住権に分けることで、所有権が他の相続人や第三者のものになったり、共有になったりしても、配偶者は自宅に住み続けることができるということになります。

これがどれほど画期的かは次回ご説明したいと思います。

事業承継

事業承継:会社の経営を後継者に引き継ぐこと。

  • 親が「子に跡を継がせたい」と思うこと
  • 子が「実家の家業を継ぎたい」と思うこと

どちらもよくある話でしょう。

「先祖代々ずっと続けてきた家業だから未来に残さなければならない(自分のせいで終わらせるわけにはいかない)」というケースもあるかもしれません。

しかし、気持ちだけでは、事業承継はうまく行かないのです。
事前の対策が必要になってきます。

今回は、なぜ事業承継の対策が必要なのか、事業承継で陥りやすい問題点をご説明したいと思います。

息子を社長にすれば安心?

「父である自分が会長に退いて、息子を代表取締役社長にすれば、完成!」
そう考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。

なぜならば、息子がずっと代表取締役社長でいられるという保証はないからです。

会社は誰のもの?

会社の社長はどうやって決められるのでしょうか?
社長自身が決められるのでしょうか?

そうではありません。

社長は正式には、代表取締役社長という役職となります。
そして、社長になる前提として、株主総会で取締役として選ばれる必要があります。

会社は社長のものではなく、あくまで株主のものなのです(会社に取締役会が設置されているか否かで異なる部分もあります)。家族経営、一族経営の場合、社長自身が株主でもあり、それも過半数以上株を持つ株主であることが多く、社長自身が自分を社長に指名しているかのように見えるだけなのです。

社長に相続が起きたら?

つまり、社長自身が亡くなった場合、相続となり、社長が持っている会社の株式自体も相続の対象となります。株式自体は、原則として、1株1株が相続人全員で法定相続分での共有状態となります。(株式の相続Q&A)

つまり、相続人同士で次期社長を誰にするか、意見が一致していれば問題はありませんが、相続人間で不仲、跡目争いになっている場合などでは、すんなり事業承継が行かなくなるのです。

上場企業であっても、現経営陣と創業家が会社の他社との合併を巡る方針で対立しているケースや、父子で社長の座を争ったお家騒動のケースなど、記憶に新しいと思います。

まずは、事業承継といったら、自社株をどのように後継者に引き継げるかが、最初のテーマであることを理解していただきたいと思います。

連絡が取れない相続人がいる場合の相続手続き、遺産分割手続【1】

第1回 連絡が取れない、行方不明の相続人がいる場合に相続手続、遺産分割手続を進めることはできるのか、探偵・興信所の調査まで必要なのか。

連絡が取れない、行方不明の相続人がいる場合に、相続手続、遺産分割手続はどのように行われるのでしょうか。

被相続人が遺言を作成せずに亡くなった場合、被相続人の遺産を分割するには、相続人同士での遺産分割協議や家庭裁判所での遺産分割調停・審判手続をおこなうことになります。その際には、相続人全員で行うことが必要です。行方不明の相続人を抜きに他の相続人間で遺産分割協議を成立させたとしても、その分割協議は無効となり、また家庭裁判所での遺産分割調停・審判手続ではそもそも手続きが進められません。

もちろんこういった場合でも法律上、相続手続、遺産分割手続を進めることは可能です。

また、連絡が取れない、行方不明の相続人の所在を調べるため、探偵や興信所を使うことが必要かという質問もよく受けます。これについては、一般的には探偵や興信所までは不要というのが回答です。

では、相続人のうちの一人が、長期間行方不明になっていて連絡先もわからないというような場合に、相続手続、遺産分割手続を進めるには、どのような方法があるのか、次回以降、解説していきます。

被相続人の預貯金を遺産分割調停・審判で遺産として扱うとした最高裁大法廷決定平成28年12月19日について【6】

第6回 遺産である被相続人名義の預貯金以外の金銭債権・可分債権一般も遺産分割調停・審判の対象となるのか。

被相続人名義の預貯金について「預貯金も遺産分割の対象となる」とする最高裁大法廷決定平成28年12月19日について、シリーズで解説しています。(バックナンバー:第1回第2回第3回第4回第5回)今回は、遺産である被相続人名義の預貯金以外の金銭債権・可分債権一般も遺産分割調停・審判の対象となるのかについて解説します。

具体的には、被相続人が第三者にお金を貸していた貸金債権、不法行為に基づく損害賠償請求権(被相続人が、犯罪や交通事故や医療ミスでなくなったなどで加害者への損害賠償請求権、慰謝料請求権)、被相続人の不動産の賃料収入の滞納分、消費者金融・クレジット会社などへの過払い金などいろいろあります。

現在の東京家庭裁判所の実務上は、被相続人名義の預貯金以外の金銭債権、可分債権一般は遺産分割調停・審判では取り扱わない(=遺産として扱わない)運用です。つまり最高裁の大法廷決定が出る前と運用は変わってないとのことです。

ただし、最高裁大法廷決定でも、最高裁判事の岡部喜代子補足意見や、大橋正春意見では、金銭債権、可分債権一般についても、被相続人名義の預貯金以外の金銭債権、可分債権一般は遺産分割調停・審判では取り扱うべき/遺産として扱うべきと述べられています。他方、額面額をもって実価(評価額)とみることができない可分債権を遺産分割調停・審判上の遺産に入れることは、遺産分割審判の複雑化・長期化を招くものとして、否定的な意見(木内道祥補足意見)もあります。そのため、最高裁内部でも意見は分かれており、今後の課題になると思います。